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2023年8月




2023/8/1


アジトに簡易的に設置するテーブルの脚と天板を仕上げた。光に当たると天板が霞んで見えたので、荏油を塗って艶出しをした。途端に色が濃くなりびっくりする。油が木に馴染んで乾くまで、きっと落ち着かないし、自信がない。その後は疲れたので、斜里温泉に入った。





2023/8/2


前夜祭。今日も早く目覚めたので、朝から2階の設営をした。色々吊ったりして、自分の視界のピントが合うような合わないような具合にする。体は動かせるけど、言葉がよく分からない。





2023/8/3


動き続けていることだけは分かる。みんな。人が集まる。





2023/8/4


朝、2階と3階の展示をいじって外に出ると、ハンケチオープニングが始まりそうだった。めいさんの横について、ハンカチを渡し続けた。色鮮やかなハンカチが1枚ずつ外から2階へ続いていく。誰も急いでなくてよかった。夜、多分何か料理をしたと思う。





2023/8/5


午前中は会場で多分コーヒーを淹れた。15時前にバスに乗り、アジトで公演を見た。稽古の途中から出入りしていた上に、以前違う場所で見たことがあったので、全くの観客でいることができなかった。不思議な浮遊感のまま、片付けなどを手伝う。





2023/8/7


7月中旬に知床に来てから初めての休み。9時くらいまで眠った後、ゆっくり朝ごはんを食べてアジトを出た。川湯温泉の濃い硫黄のお湯に入りたくなったので、川湯を目指す。久しぶりに大した目的のない移動をしていると思った。広い森の中の道路を抜けて、硫黄山に行く。夏休みの観光客が疎らにいた。売店でメロンソフトクリームを食べながら、硫黄の黄色を見た。斜里の町で初めて服を買う。夕方からは稽古。みんな疲れていた。





2023/8/10


一昨日から体調が悪い。悪寒がこんなにするのは久しぶり。生きていて初めて涙が出るほどの腰痛。あまり思い出したくないので、日記に書こうと思えない。


留萌、宗谷、十勝、釧路、網走、北見、紋別、青森、波の高さ、霧の濃さ、札幌市の上空太陽光で照らされている。24.9度、湿度88%、6時になる。台風6号、1時間に15キロの速さで、愛媛、和歌山?この時間は長崎県と福岡県の一部が暴風雨。線状降水帯。顕著な雨。宮崎、熊本、高知県、愛媛、大分、氾濫危険水位を超えた川。





2023/8/11


バストリオの人たちがすごい勢いで動いていて、びっくりした。午前は晴れ、午後は曇りのち雨。昨晩からの止まらない勢いがあって、応援したくなる。応援したくなる、ってすごいことだと思った。夜は来来軒で辛味噌ラーメンを食べて、グリーン温泉に入って、庁舎の駐車場に停めた車の中で眠った。





2023/8/12


車の中でぼうっとしていたら8時頃だった。体調不良になってから5時以降も二度寝できるようになって良かった。シフトともなんともいえないような状態でみんな会場にいる。






2023/8/13


物見台ツアー。この場所の昔のことを聞いた。たっぷり2時間のツアーの途中、物見台は数人しか登れないので、3階の私の展示場所でみんな待っている。そのいくつかの目線と体の揺れ動きに動揺して、長い時間そこにいられなかった。本当はいるべきだった。






2023/8/22


みんなが帰る日。慌ただしく動いている、空っぽになっていく会場。車から見た海と草の光が綺麗だった。後部座席に乗った人たちがつくる音。さようならはいつも悲しいので、あまり考えたことはなかったけど、ちゃんと悲しい思いがして嬉しかった。飛行機乗りたい。






2023/8/23


夕方、斜里を出て苫小牧まで5時間ほど走り続ける。0時頃にフェリーのベッドに横になった。


ずっとシャワーが床に当たる音みたいなのが聞こえるけど、それが何かわからない。船の上は相変わらず電波がなくて、地上で起きていることは何も分からない。昨日、数年入院している叔父がもうだめかもしれないと母から連絡があったけど、それが今どうなっているのか分からない。


時期、タイミング、感覚、体調を崩してから匂いが何も感じられず、感覚がすごく鈍っていて悲しくなる。物の色は分かるけど、その場所への手掛かりや空間は閉じられている。食べ物もうっすらとぼやけていて、塩が強ければ嬉しい。


昨日、斜里の喫茶店でたくさん涙が出て、悲しくて苦しいことに気がついた。体調を崩してから、悲しくて苦しいことに気がついていなかった。ただ人に甘えていただけだと思う。


自分では誤魔化して少しの間はいれるけど、他人には最初からバレていて、その冷たさと優しさに、人のことをもっと嫌いになって好きになる。多分、人に対して憎悪と愛しさの両方を感じて、ちゃんと向き合わないといけない。土地や家に対してもそう。都合のいいところだけを選んでいても、うまく生きていることではない。逃げないで、泥臭く足掻けるようになりたい。


今、中途半端に1人だからそうなることに対してのハードルが高い。逃げきれてしまうから、もっと積極的に人と土地と関わらないといけない。そうやって変わらなければ、続けてられないことがあることを直感している。大学を卒業してから2年目、葦芸に関わり始めてから2年目、1回きりの関わりは簡単で、継続は難しい。



風呂もご飯も何もしないで昼まで寝ていたので、12時頃、船の揺れがひどい中、風呂に入った。辛い冷凍のパスタを食べるとまた眠くなる。少しだけ外に出て、船のすぐ下を見ながら、揺れて踏ん張る自分の足を意識した。2本の足の裏側、巡られた筋肉、そこから繋がる内臓、手、脳、寝たきりではない体。全身がまだ繋がっている。


いつかその繋がりがバラバラになって、体を意識だけで繋げなくてはいけないとき、生きていることが途端に離れていってしまう気がする。病院の臭い。それでも、すぐ手元にあって、手放さないように抱えなくてはいけない。そうやって必死に抱えている人がすぐ近くにいるから、たまにお見舞いに行く。


最近はその人のことで泣かなかったけど、今日は泣いた。人の生死をうまく認識することなんてできないけど、向き合って逃げないことはできると思う。自分が壊れそうだからずっと微妙に背いてきたけど、それで壊れるような自分はあまり好きになれない気がする。



1、2月、2ヶ月間知床に行く。そこで誰かの手伝いをする。身近な人と向き合って、でも、向き合う前に準備をする。たくさんのこと。歳をとるにつれて、おそらく違うやり方で少しずつ試していかなくてはいけない。


今日の船はたくさんの子供の声がする。いつも煙草臭くて歳をとった人しかいないのに。同室は親子2人だった。私がずっと寝ているので、小声で会話をしている。それに安心してずっと眠る。着港する1時間前に起きた。


下船をすると、外は湿気で暑い。東京から沖縄に着いたみたいな感覚だけど、匂いがないので、出来事を感覚ではなく知識や考えで把握しなくてはいけない。匂いの、場所への察知は偉大なものだと思う。どこへ移動しても危機感、高揚感が感じられず、抑揚がない。






2023/8/24


朝、洗濯をして、この場所の暑さを思い出した。一昨日作ってもらった赤いボルシチがいつまで体にいるのか、なんとなく考える。母が家に来て、お盆の間コロナに罹っていたと言った。同じくらいの時に私も体調を崩していたと話し、2人とも匂いがしなくて笑った。料理をしてもよく分からないので、匂いが治ったら2人で料理しようと約束した。


13時過ぎ、母と一緒に病院に行って祖母と叔父に面会した。祖母は意識がはっきりしていて、毎日北海道の天気予報を見ていたと笑っていた。なんとなく買った狐のキーホルダーをあげて、野菜のふりかけをふたつ貰う。


叔父の方は、意識が混濁していて2つの目が見たことのない動きをしていた。体は小さいのに顔は浮腫んでいて誰だかよく分からない。あまり思い出さなかった人、思い出すことが億劫だった。人間ひとりが過ぎた数十年の時間の厚さと薄さにおかしくなりそうになる。


会計でもらった紙に印刷された全く見覚えのない薬品名、点滴。こんな細かい妙なバランスで体を維持している。北海道で見た人々の動き続ける体とは別物みたいだ。


夕方、母と別れて1人でホームセンターで買い物。日用の消耗品を買って、自分の生活が続くことを思う。






2023/8/25


昼過ぎの電車に満たされた人々の8月が終わる感じ。白くて暑い日差しと白い薄手の服。相変わらず匂いがないので、その場所にいながら自身の周りだけすっと切り取られているような感じがする。


この空間への繋がりは狭められていて、冷房が当たる体と自分の意識は少し離れている。車内の光の満ち引き。揺れて曲がる線路の鉄の温度。冷たくなった銀色のポール。

東京に着く。喫茶店に行った後、夕方からいつもと違うコミュニティの人たちと会った。接点はあまりないけど、みんな良い人。夜はお茶をして深夜に生ビールとラーメンを食べた。暗闇。きっと確かないろいろな話をした。




2023/8/26

普通でハッピーなことをしようと、昼から肉を焼いてビールを飲んで、雨雲が去ってから植物園に行った。微妙に手入れされている園内。菩提樹が見れてよかった。久々に履いた革靴に少し苦戦しながら、一周する。


帰りの喫茶店では、甘いコーヒーを2杯飲んでこれからの話をした。できることがはっきりしてきて気持ちが良い。体が動いていく予感がする。だらだらと移動してサイゼリア。間違い探しを10個見つけられた。






2023/8/27


部屋の片付け。冷蔵庫の片付けが気持ち良い。まともに料理の勉強をしたことがなかったので、実家にあった10年前くらいの雑誌や母が若い頃に通っていたパン教室のメモを見て学ぶ。結構何も知らない。




2023/8/28


ニュースが報じるインドのスネークボート。大雨の中、100人くらいの人が一隻の細長いボートを漕いでいて、ちょっと元気出た。


昼はパスタとスイカを食べて、夜はペンネとスイカを食べる。昨日に続いて合計151のレシピをA5のメモ帳に写した。半分以上作ったことないと思うけど、なんとなく味が分かる。作れそうだなというものから、苦手だなというものまで色々。


テレビで流れている深夜の転生アニメ。北海道に帰ってきてから夜に強くなっていた。明日は山に入る。読めないものがあることを受け入れようと思った。





2023/8/29

冷蔵庫にあるスイカを食べる。家のゴミ出しの曜日を忘れていて、少し嬉しいような悲しような浮ついた気持ちになった。今日は燃えるゴミの日、13時頃まで回収されない。





2023/8/30

2日間ほどぼうっと過ごした後に、あれ?忙しいじゃんという焦り。いつもそう。昨日考えたスケジュールより今日の体の動きに合わせて予定を変える。


昔に亡くなった彫刻作家の作品集を見ていると、作家の言葉はこんなに身勝手で断定的でいいのだなと思って安心する。内容はよく分からないけど、その思考の取り組み方は少しだけ分かる。文献とか根拠が必要な気がしていたけど、それは私のやり方じゃないと思う。直感で言葉の間合いを見つけてみようと思う。嬉しい。


半年以上経って車の保険会社に住所変更の連絡をした。代理店がやってくれていると思っていた。担当者の声が綺麗で嬉しかった。テレビで見た硫黄ゴケ。行きたい場所がたくさんある。




2023/8/31


アメリカのタイフーン。アメリカ大陸の大雨と風は、台風よりタイフーンって感じ。多分山が少なくて土地が広いから、風が強くて竜巻とか生まれやすいのだと思う。









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