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2023年10月





2023/10/1

朝、なんかすごい落ち込んでいる。よくわからないまま荷物を詰めて、タイヤの空気を入れてもらい、セブンでカップ麺を食べて高速道路に乗った。雨、晴れ?群馬の高原に入った辺りから日差しがとても強くなる。山や畑は高原の色をしていた。ずっと都合の良いことばかり考えてしまうのをやめたい。

長野県辰野町の滞在場所についた。ここで2ヶ月くらい過ごす。スタッフとアーティストの両者がいる。この場所で私は最年少じゃない。夕方を過ぎると結構寒い。真っ白の部屋。荷物を広げてみたら案外落ち着いた。






2023/10/2


朝起きて少しだけ体を動かす。昨日もらった布を切って貼った。大きく雑な動きはいつでも出来てしまうから、ここでは小さな作業をたくさんしたいと思う。そうやってものが溜まってきたあとに、大きな動作が生まれればいいなと思う。自分か誰かのためか分からないものをたくさん選んで車に積んだ。






2023/10/3


午前は中国人の女性と大学生の男の子と一緒に、しだれ栗森林公園に行った。名前の通り、見たことのないうねうねとして垂れた栗の木がたくさん生えている。実は小さくて、人間が食べるものに見えない。展望台からはたくさんの山が見えた。とても高いらしい。大学生は遠くの山を指さして、あの辺りを数泊しながら縦走しました、と言った。すごいね、と言ったけどあまり信じられなかった。霞む山と隣にある体の接点が分からない。


午後は車で2時間ほど走って信濃大町に行った。商店街に点在している作品を見て、夜は作家の2人と一緒に陶芸家さんの家に行った。夜から明日の夕方まで続く火入れの作業の傍で、焚き火にあたる。2人が近くの湖で取ったという土を練らせてもらい、焚き火のそばに置いた。上手に焼けた。






2023/10/4


昼から数人で空き家の掃除をした。鼻の調子がまだ悪いので埃臭いことが分からず、たくさん埃を吸ってしまった。マニュアルの軽トラを運転する。信号付近で会話をするとエンストした。夜、喉と鼻が気持ち悪くなる。風呂に入った後、少し雨に当たってしまった。






2023/10/5


風邪気味の体を起こして、5時に辰野を出る。近くのインターから東京の国立までずっと高速道路に乗る。本当に眠ったときがあったと思うが、どうにかなった。8時50分から12時まで授業の手伝い、ゼミ生の前で自己紹介を20分間した。意外と話せるということに毎回びっくりする。


15時頃からは高円寺の方に移動し、稽古を見学した。何回聞いても対して覚えられない台詞、動き、表情。






2023/10/6


朝、こっそり伝える、美術の打ち合わせ。その流れで稽古場に行き、扉の外で作業をした。夕方からは大きなよく分からない体育館。カメラを持ったけど全然出来なかった。夜の間に片付けて、栃木に帰る。首都高に乗って埼玉まであっという間に行って、どこかのコンビニで眠った。






2023/10/7


横になった。






2023/10/8


朝から作業をして、ホームセンターに行った。昼は美容室に行き、髪の毛の内側の色を抜いて染めた。何でこんなことをしているのだろうと思う。気分転換。


家に帰ると鍵が開かず、ホームセンターに行って鍵クリーナーを買ってみたがどうにもならなかった。夜まで実家に行き、諦めてテレビを見ていると、子供のいたずらでベランダに締め出された母親の映像が流れた。救急隊員がそこまで梯子で登り、ベランダの窓をどんどんと叩き、鍵をずらして開けようとしている。これだと思い、家に帰って居間の窓をどんどん叩くと鍵が開いた。






2023/10/9


朝から叔父に線香をあげに来る人がいるというので、家を片付けて、外に建てた小屋とトイレを解体し始めた。9時頃になると、母が来て線香をあげながら遺品の整理を少しする。10時頃になると父が来て、家の鍵の修理を始めた。2人の男性が線香をあげに来たが、私と父は変わらず作業をしていた。変な家。


夕方から移動をはじめ、夜に東京へ着く。雨、駅に迎えに行った。




2023/10/10


早起きをして朝ごはんをちゃんと食べ、9時から劇場に木材や道具を搬入した。たくさんの木材、作った通りに組み立てると、立ち上がって形になるのは不思議な感じがする。


1時間で大体立つぜ!とか言ったけど、全然違った。人がたくさんいて、それぞれが同時に違う作業をしていると、自分の作業に集中することが少し難しくなる。道具や物を広げながらも、散らかりはしないように気を付けた。劇場という知らない場所。






2023/10/11


昨日、大体の取り付けが終わり、今日は天上のバトンから糸をたくさん吊って、金具や小さいものを付けた。繋がる、揺れる、光る。






2023/10/12


早起きをし、午前は大学に行った。パンと花を買い、午後からは劇場に行く。夜は家系ラーメンを食べた。






2023/10/13


あまり初日という感じがしないまま、今日になった。少しゆっくりの朝を過ごして、街中の花屋を見て向日葵を探した。結局、鷺宮の花屋に行った。劇場に着き、道具を車に片づける。私の痕跡とその上に重なったそれぞれの跡。


この場所にいて体ごと上演に出ることと、この場所に働きかけてものを残していくことはほとんど変わらないと人に教えてもらった。舞台美術といっても、ただの美術ではない役割。


直前まで大丈夫かなと心配だったが、みんなの本番の強さはすごかった。音(よく分からないけど)がちゃんとあって、それぞれが舞台へ働きかけていた。


片付けを手伝い、明日から自分はここにいないけど、この人たちはあと12回上演するのだと思った。その不思議さ。演劇ってよく分からない。変だと思う。






2023/10/14


部屋に散らばったものを片付けて、車に積んだ。好きな曲をかけてドライブ。頑張って八王子の方まで下道で行ったが、眠って起きてご飯を食べると、高速に乗ろうと思った。パーキングエリアでも眠りつつ、夜、辰野につく。1階に行って人に挨拶をしようと思ったけど、何もできなかった。寝る。






2023/10/15


起きて、自分がどこにいるのか分からなかった。何回も聞いている曲を流して目を瞑る。雨みたいな川の音。大きな窓で冷えた部屋に暖房を入れて、インスタントコーヒーを取りに一階へ降りた。洗濯機を回す。安くて美味しい海苔の英字ビスケットを食べながら、溜まっていた作業を進めた。






2023/10/16


午後からレジデンスにいるアーティストの自己紹介プレゼンを聞いた。13時から18時くらいまで同じ部屋にいるのは辛かったので、自分の部屋からzoomで聞いたりもした。その場所にいた方がいいのだろうけど、いないことで何か大切にできることもあると思った。


なんでこんなことしているのだろう、という人たちが同じ建物で暮らしていて面白い。うまく話せないときがあっても、何かその不思議な喜び?をずっと感じている。

うまく自分の考えがまとまっていないとき、人の考えを聞くとすごく制作をしたくなる。夜は昨日初めて会った人の誕生日会だったが、それに参加しないでずっと小さい家をつくっていた。遠くの光、声。誰の誕生日でも祝えるわけじゃないと気付く。



2023/10/17


朝から自分の展示会場の空き家を掃除した。大学生2人に手伝ってもらいながら進めると、昼過ぎには光がよく見えるようになった。1人だったらどうなっていただろう。


少しだけ大家さんと話し、ここには10人くらいで住んでいたと聞いた。安藤精麦、商売人の家。家は、とても古い部分と増築されたところが混ざっていて、不思議な形をしている。不安になるような、安心するような変な感じ。この感じを残したまま、ものに触れたらいいと思う。東京にある自分の一部とここにある体のことを考える。


夜、川沿いを歩いていると、天竜川の流れが血のように見えた。どくんどくんと流れる血を見たことはないけど、多分似ている。






2023/10/18


午前から作業をして午後から人に会いに行った。同じゼミを数年前に卒業した人の工房の前で待ち合わせ。教授が言っていた通りの人だった。時間は違うけど、同じ人と話したというだけで共有しているものが多いように感じる。鉄の多い工房に差し込む光と白い煙。


使われなくなったものたちの場所がきちんとあると思った。難しいことだけど、絶対に忘れたくない。まだ言葉にできないので、手と足を動かしている。それを脅かされることは嫌だけど、守りたいので頑張りたい。でも、まだあまり人と話したくない、話せない。






2023/10/19


滞在制作をする理由と意味について考えた。自分の地盤の作り方を学んでいるのだと思う。地方か都市か、国内か海外か、全ての色々。でも、きっとここではまだ幽霊みたいなもので良い気がしている。自分の場所がきちんとできたら、人に会いに行きたい。


自分は、どこでも自分の場所をつくらないと安心しないのだと思った。自転車やバイクの軽装備で移動している人たちはどうなのだろう。車を持っていないときの方が不便で、気楽だった気がする。車、必要だったのかな。


とりあえず、自分の好きな場所をつくることに専念する。知床の展示場所で、自分の展示が好きなんだね、と指摘されたことはいいことだったし、そうあるべきなのだと思う。



作業終わりの夜、キッチンで酔っ払いに話しかけられて、酔っ払いと話すときは自分も酔っ払っているのだなと思った。すごく興味がなかったし、嫌だった。






2023/10/20


西友はいいよ、





2023/10/21


やまがやまを覆っているような


午前中、辰野から東京へ移動した。色々な人に会って、夜はたくさん料理した。すごく料理をしたい気分だった。






2023/10/22


朝から六本木に行って、マテリアルの展示を見た。分かったような分からないような変な展示。その後は駒場の東大に展示を見に行った。そっちの方が分からなかったけど、熱意がすごくてよかった。数字とか形に魅せられている人たちのものと言葉。






2023/10/23


バストリオの千秋楽を見て、そのあと舞台のバラシをした。勢いのまま全て壊す。建っていても建っていなくても木はあって、気持ちの問題でそれらが空間を持ったり、持たなかったりするのだと思った。


夜は一旦車を置いてから渋谷に行き、みんなにもう一度会った。よく分からないけど、見たら安心する人たち。






2023/10/24


朝、少しゆっくり起きて日曜日に買った雑誌を読みながら、考えをまとめた。昼から夜まで、途中でじゃがいもとかぼちゃのニョッキを作りながら、ずっとある感覚を手放さないようにする。ニョッキがめんどくさい料理で丁度良かった。


夜、辺りをうろうろと散歩しながら、いいことを4つほど思いついて少しほっとする。銭湯に行って、ニョッキを茹でて、食べて寝た。






2023/10/25


13時からものを作る話し合いと、19時から展示の話し合い。移動の電車はずっと気絶したように眠っていた。昼はコンビニのドーナツを詰め込んで、夕方は駅のうどんを食べて、夜はパスタとかピザを食べた。






2023/10/26


パンとコーヒーを食べて、また眠った。昼起きて、残りのパンを食べ、ドトールに行く。人々への連絡。ピンタレストの整理。


夕方、車で世田谷美術館に行き、いい展示を見た。環八でゆっくりになる道、眠くなる。帰りにスーパーに寄ったら、2000円以上買わないと駐車場が無料にならなかったので、余計なビールやアイスを買った。






2023/10/27


好きな場所を教えたくなったので教えた。自分の体は元気だと思ったけどそうでもなかった。何かに耐えるように必死に運転をして、夜、辰野に着いた。






2023/10/28


色々しようと思ったけど空回りした日。諦めて寝る。場所の時間にきちんと体を沿わせないといけない。






2023/10/29


シェアハウスというけど、自室にこもって半日くらい過ごすこともあるし、車でどこかに行くことも作業場に篭ることもあるから、あんまり人と過ごしている感じがしない。


ここでは掃除や料理などの全体に対しての役割がないので、誰の行動のパターンも把握していない。一階に行けば、何かしら食べるものがあって、人が集まるところから少し離れたところにシャワーがある。よく分からなくなるほど色々な人が出入りするけど、それらは空気とか風みたいなものに感じる。


建物は大きくて、玄関の鍵はいつも空いている。人と暮らすって、相手のことを結構考えることだと思っていたけど、たくさんいると考えきれないから考えなくていいんだなと思った。だから、自分の生活圏に誰かがいるし、誰かの生活圏に私がいる、みたいな感じがして大して普通の暮らしと変わらない。


夜、作業を終えて戻ると、大学生の男の子がカレーを温めてよそってくれた。すごい大盛りだった。






2023/10/30


セブンのホットコーヒーを飲んで美味しくないかもと思ったとき、自分の味覚が悪いのか、セブンのコーヒーマシンが悪いのか分からなくなる。大体ぬるくなると同じような味になるので飲める。


コーヒーやチョコレート、お酒が好きだけど、それがどれくらい体に影響があるのかよく分からない。そのよく分からない影響のせいで好きなのか、単に味が好きなのか、考えてもよく分からない。


考えなくても分かるみたいなことは結構ある。考えることも好きだけど、分かるみたいなものを転がしているようなときが好き。がっと掴んで、少しずつ解きながら、積み上げていくような感じ。


自分がそこにいるということで受けている影響や環境は、絶えず私の中を巡っていて、理由や言葉はあとからいくらでも結びついてくる。だから最近は、目的みたいなものを持っているけど、持っていないみたいな状態にしている。


これがしたい、という大雑把なことと、その場に行ったときに受ける影響と触れるもの。その状態がうまく形成されるように、道具と体力と感覚はちゃんとしておかないとなと思う。


夜、ライブを見た。知らない場所でもお酒を飲めばどうとでもなる。



2023/10/31


午前中、バーっと返信をして、午後から産廃業者のゴミを見に行った。マットレスのバネなど色々なものを拾った。帰ろうと思っていると、解体業者の大きなトラックがバラバラになった家屋の廃材を捨てにきた。一瞬でたくさんの木材が地面に落ちる。やっぱり木材や材料は、気持ちの問題でバラバラになったり家になったりするのだと思った。そのことに結構安心する。








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