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「家々」
トビチ美術館 | 長野県辰野町
私には、家みたいなものがありません。
栃木県では、祖母が住んでいた家に寝泊まりし、 今年の夏と来年の冬は北海道に行きます。
最近は東京の人の家にもよく泊まるようになりました。
辰野には10月1日から滞在しています。
その間にも、栃木や東京を車で移動しました。
だから、まだあまり辰野のことを知りません。
移動を繰り返し、自分の家というものがなくなっていくと
移動先やある期間の滞在場所で、自分の好きな場所をつくりはじめます。
どこにいても自分の好きな光と風と空気があって、
それを見つけるために部屋を掃除したり、ものを置いたりします。
小さな家も大きな家も全て同じ、自分の居場所です。
小さな家をつくっているとき、ラジオでイスラエルのニュースを聞き
手元の家も、遠い国にある街の家も、地続きで繋がっていると思いました。
人々の暮らしや営みの中に、国や様々なものが内包されていて、
世界のあらゆることが自分の体に内にあることを思い出します。
辰野は空気が澄んで、太陽が近い町です。ここに来て、初めて小さな家をつくりました。
私は何か捉えきれないものを知りたくて、よく移動をします。
展示を終えたあと、これらはそのときの体や記憶のようなものかもしれないと思いました。
みえるものは絶えず変わっていきますが、体が収まる場所はどこにでもあります。
多分、その感覚に近いものがこの家々です。
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