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2022年8月前半




2022/8/1 金麦


8月1日の月曜日。月初めの月曜日は色々なものがばっと動き出すような気がする。曇り空で風が強いので寒い。


朝は農家さんの家に行って、ネギとお菓子や桃を渡した。


昼はもらったニンジンとズッキーニで肉巻き、ピクルス、キノコのスープ、ご飯を炊く。コンロ1口でも、50分ほどで全て作れるようになった。すごい。


小麦の匂いをかいたので、昼から金麦を飲んでみた。それを農家さんに連絡すると、酒は大麦だけどね、と言われた。


私の展示場所がなんとなく決まる。あと残り4日で何ができるかわからないが、明日から体を動かそうと思う。


夜は、近くの居酒屋兼定食屋でかしわうどんを食べた。太い麺と濃いつゆが美味しい。安心する味がした。






2022/8/2 ポトフ


曇り。昼に農家さんとYさんとNと一緒に昼ごはんを食べた。私が気まぐれで朝に仕込んだシンプルなポトフ、ネギのマリネ、にんじんときゅうりのピクルス、パン屋で買ったパンを少し焼いて食べた。


食後、Yさんが食器を洗っているときに農家さんと会話をする。農家さんに、一人っ子の私は、競争の世界にいないみたいだと言われた。


昼過ぎに会場に行った。二階の展示場所で眠る。あまりに眠かったのでドアから数歩歩いたところで倒れていた。本当に焦っていたら眠くならないし、締め切り寸前はそういうふうに体が動くので、眠りたいときはどこでも眠ればいい。


30分ほどして起きた。近くにあったラジオをつけてみると、上海、アムール川の低気圧が東北にゆっくり進んでいると男の人が言った。


夜は寒かったので鍋をした。買い物に行ったNに指示をして、鶏肉や野菜を買ってきてもらった。それらを水で煮て、少し味付けをした。


白菜、大根、にんじん、榎茸、鶏肉、マロニーちゃん。くたくたになるまで火を通し、薬味とポン酢をかけて食べると、安心する味がした。ほわ〜としたので、一升瓶の日本酒を開けて飲んだ。青森県の甘口のお酒だった。


NとYさんが入れ替わりになり、10時手前になると三人で風呂に行き、適当に作業をした。私はビールと日本酒を飲みながら、児童向けの大型紙芝居の張り紙を作った。子供の頃は、張り紙がこんなノリで作られるとは夢にも思わなかった。






2022/8/3 ばしばし


晴れ。今日は海が濃い、紺色。聞こえる音があり、見えない風景がある。繋ぎ止めるもの、消えるもの。


午前中、Yさんとサンドイッチや桃を食べて、会場へ行った。桃はもう残り2つくらい。色々なところに飛び立って、多くは私の中に取り込まれた。


桃の甘い匂いと瑞々しい食感は、私のどこに隠れているのだろう。肉のついた指は関節、薄い皮膚の下に見える白い骨が少し桃みたいだと思った。いくつか食べたブルーベリーの渋みと酸味は、内臓に染みているような気がする。



展示場所で体を動かしていると、些細なことで30分ほど悩んだりしていた。ものを置いて、外して、ずらしての作業で、人から見たら何もしていないように見えると思う。


私はここで、壁の汚れや天井のシミ、窓の風景に目がいくようにものを置いているのだと気がついた。どうしてそんなことをしているのか分からない。


最初の構想のようなものが、いかに場所を知らない提案だったかと思った。そういえば、私は学校以外の場所で展示をしたことがない。


私はこれから作家になるか、何物になるか分からないが、ここでこうして動いている体は血と肉となり得るような感覚がする。自身の溜めている仕事がどうにかなるような気さえもした。



日々、自分の体で作った料理を食べて、たまに店で作られた定食を食べる。今日の夕飯はNが作ってくれた。


少し固い白米、野菜の味噌汁、Nが昼間に博物館の仕事で貰ってきた魚の味噌漬け、サラダを高速でかき込んだ。その後は風呂に行き、さっさと洗って出た。何とか集合時間に間に合う。


夜は皆で話し合いをして、身近なもので音を出して演奏めいたことをした。西荻で買った水差しがシンバルのようないい音がすることや、テープの引っ張る音、バケツを棒で叩く音を聞いた。斜里小学校の校歌を皆んなで歌って、楽しかった。






2022/8/4 間


いい天気。朝は自分の考え事をして、日記をまとめようとした。


昼頃、会場へ向かうと道中でNの乗る軽トラに拾われて、亜里洲という喫茶店に行った。Nは生姜焼き定食、私はエビスパゲッティーグラタンを頼んだ。煙草を吸いながら、動植物の生と死の話をする。


Nは、アメリカの原住民族のある人が、石や岩が生きているという考えを持っていたという話をした。その途中でYさんが来て、私たち2人の空気はもう取り戻せなかった。諦めて、他の話題をする。Yさんの言葉を聞いてみたいと思って強目に質問をしたが、うまく聞き出せなかった。


その後は、Nと一緒に朱円の小学校に行ってパイプ椅子などを軽トラに積んだ。校庭にいる三匹の山羊を眺める。


道中で小麦の収穫を見ることができた。軽そうな蜘蛛ような機械でスイスイと小麦を切っていく。帰りにコンビニでアイスを買った。


夜はクリエーションをした。自分がどうだったかは分からないが、全体的にいい感じだった。発表に慣れることはいいことか分からない。






2022/8/5 ワイルドベリー?


8時頃に目が覚めたが、5時間ほどしか眠っていないので眠い。朝の7時から打ち合わせがあると言って出て行ったNが帰ってきたので、私も起き上がった。


Nは、カナダに住む老人が送ってくれたというワイルドベリーのお茶を淹れてくれた。とても香りが強くて、少し渋い。


昨晩は風呂に入り損ねたので体が不快だったが、昼頃まで近くの温泉が開かない。帽子を被って、着替える。本を読んでいると、一匹の蝿が飛び回り、腕や帽子、指先を這った。自分が思っているよりも蝿を嫌だと感じなかったので、そのまま朝食を食べる。


10時頃に会場に行き、掃除をした。午後にふらっと会場を抜けて、温泉に行った。いつも夜にしか行かない場所に昼間行くと、普段より美しく見えた。


22時、Nが博物館で大判印刷をすることをナイトミュージアムというので着いて行ったら、特別楽しいことはなかったので損をした気持ちになった。ビールを飲んでいるので眠い。標本のでかい鹿を撫でた。


明日から芸術祭が始まるが、明日からやるよ~!と誰かに向かって言うほど、関わってもいないし自信もない。Nが印刷をしている間、巻き爪気味の足の爪を触っていた。明日は海に花を摘みにいく。






2022/8/6 夕方


海の規則的なようで不規則な音や形を見ている。前浜の波は、海の手前のみで波を立て、地平線のほうまではずっと無数の波頭がある。


灰色とか紺色にも見える海と、鳥の死骸ように咽せ返る濃い潮の匂い。風は斜里岳から降りてきて、砂浜の葦を揺らしていた。


知床連山の麓ではウトロの灯台が光っていた。ウトロと斜里間を結ぶ道路を走る車のヘッドライト。あの車はきっと八十キロほどで走っているだろうけど、今の私の場所から見るとほとんど止まって見えた。


陽の落ちてた海は徐々に見えなくなり、音が大きくなったように感じた。弾けながら戻っていく海と、砂浜に伸びる海。


防波堤の端で、白い泡を浮かせながら不恰好に留まり、ゆっくりと海へ戻っていく。いくつもの跡を作っては消していく波の動きを捉えようと眺める。しかし、そこに何もないのだと感じ、ぼうっと遠くを眺め、潮の香りで息をすることしかできない。



夜、適当にご飯を食べた。ウトロの夫婦が飼っている犬を部屋に入れて眠ろうとすると、犬が甲高い声で鳴き始めた。30分くらいで鳴き止むかと思ったが、2時間ほど経っても変わらず鳴いている。


トイレかと思って外に連れていくと、凄い勢いでおしっこをして、駆け出したので体が強く引っ張られた。眠く弱った体では耐えきれないと思い、そのまま外に繋いで眠る。


すると、Nが慌てた様子で私の部屋のドアを開けた。犬が脱走したと思って焦っているらしい。外にいると告げると、Nは近所迷惑になるからと再び家の中に入れた。犬はNの部屋に入れられたが、クーンと鳴き続けて朝になった。






2022/8/7 桑の実


犬の鳴き声が、自分の愛犬だとしても得意ではないので、鳴き声を一晩中聞いているのは疲れた。朝起きると、Nは気まずいのか、眠いのか分からない表情で私に謝った。


Nとこの犬と仲が良いのは知っていたので、いつも通り珈琲を淹れた。午後から会場でシフトがある。


夕方になるとひどく疲れていて、周りの人々を疎んでしまう気配がした。なので、家に帰ろうとすると、みんなでご飯を食べようということになって悲しくなった。


たったそれだけ、いつもだったら1人でふらっと逃げていたことが、昨晩の疲労のせいでとても悲しいことに感じた。


裏口から出て、駅の方まで適当に歩く。私はNよりも心持ちが安定しているのではと考えていたが、全くそんなことはなく、彼女のおかげでこの場所でやっていけているのだと思った。そんな当たり前のことが、とても大事に思えて、自分の弱さをひしひしと感じた。


何かそうした盆に乗ったものがひっくり返ったとき、どうして耐えることができないのか分からなくて泣きたくなる。自分に執着している自分を見つけて、全てが嫌になった。


ふと、上を向いたとき、道の林に桑の実を見つけた。一粒口に入れると、体の中にあった様々なものが解けていく味がする。


どうでもいいことで悩んでいたな、と頭がすっかりと切り替わって、道を引き返した。会場の手前までくると、Nが道に出てこちらを見ていた。私は走る。Nは出前のできる店が軒並み休みだと言った。何となく、私は間違っていなかったと笑い、会場で持ち寄って食事をする準備をした。






2022/8/8 k


朝、流氷テーブルを海へ持っていて写真を撮ってもらった。その後、チーズトーストとトマトスープ、作り置きのものを出して、NとYさんと一緒に朝ごはんを食べた。


Nは人との約束でどこかへいき、Yさんは隣の部屋で昼寝をしている。人といることが少し嫌になって、コインランドリーにいくがてら街を歩いた。


昼飯を作ると口走った気がするが、駅前の喫茶店に入って量の多いランチを頼んだ。喫茶店に入って1人でコーヒーを飲んでいると、とても楽な気持ちになり、この町で起きていることの全てを捉えようと思うことをやめた。


目の前にあるフォークと琉球ガラスのような小さなシロップ入れ、少し臭いおしぼり、茶色いソース瓶を見ている。窓の植物。


今朝、海に行った時に見た青空は白い雲で覆われ、全てが鈍い光を浴びている。皮膚にジリジリ浸透している気がした。逃げられない日差し、果てしなく満ちた空気、物質の様々な色に何だか疲れた。



店を出てコインランドリーに向かうと、棒鱈を咥えた犬が金物店の周りをうろうろしていた。


微妙に乾いていない衣服を取り出し、家に帰ろうとして道に迷った。適当に歩いて着くかと思ったが、あまり道がない。この街は、車の感覚でつくられていた。


15時頃に家に着くと、温泉に行った。慣れた運転と見慣れてきたグリーン温泉。時間帯によって客は決まっており、彼らはこの温泉に染み付いた匂いや空気のようだった。


受付のおじさんは昼間は機嫌が良いが、22時に近づくにつれて眠そうになり、態度が刺々しくなった。私はここにいる人たちとこの建物のひと部分しか知らないし、それ以上に知りたいと思わない。


そう比べると、葦芸の会場で起きている様々な現象は、私の体力や集中力のある限り、どこまででも追えてしまうのだと思った。それだから私は疲れているのだ。自分の踏み込む場所がどこまでか分からず、ひたすらに求める体力や余裕もない。


一緒に活動している人々の動きや深度を見て、憧れたり、後悔したりする。彼らの情熱に対して少し不安になったりする。恐らく、ゆっくりでいいのだろう。来年もここにいたいと思えたら上出来なのだと思う。



17時からの9人でクリエーションをした。今までの発表の復習で、自分の覚えている言葉や空気感、身体を思い出して、再び動かすことは不思議だった。慣れを感じる。


私は声が小さく、佇まいがいいらしい(本当?)。自分では分からないことばかりが起きていて、私の中で起こっていることは唯一無二なのだと思った。その中で不確かな事実が空気感として存在している。


22時頃に終わると、ゴミ出しをして、しれとこクラブの温泉に入った。しれクラのお湯はいいお湯だった。ちょっと熱くて、体が包まれたような滑りがある。しかし、狭かったのですぐに出た。


拭き取った水分。湿った体が少しずつ乾いて、体は外の空気との間を探そうとする。体が湯の温度を忘れた後でも、何故か温泉のいいお湯だったということは覚えている。






2022/8/9 ポテサラ


蒸し暑い夜だったので眠っていたのか起きていたのか分からなかった。暗い窓が明るくなる瞬間を見たような気がする。夜中に虫の羽音が聞こえたので、虫に刺されたと思って掻いていた場所は何もなかった。


昨日、自分で焙煎した豆を淹れ、それを飲みながらじゃがいもを茹でた。ゴボウを切って水にさらし、にんじんを千切りにする。10時頃になったので一度会場に向かい、中の様子を見た。


特に私がいなくてもいいようなので家に帰り、茹だったじゃがいもを潰して、塩で揉んだきゅうりや玉葱、マヨネーズ、塩胡椒を混ぜた。ポテトサラダ。


ゴボウと人参をごま油、醤油、みりん、砂糖で火を通してきんぴらを作った。白米を炊く。


Nが博物館の昼休みで帰ってきて、一緒に昼ごはんを食べる。最近はこうしたことが多い。リビングの丸いテーブルには、白米、キノコのマリネ、ズッキーニの煮浸し、ポテトサラダ、きんぴら、梅干し、冷たい緑茶が並んだ。


Nは精進料理みたいだと言った。私は本当に自分が作ったものかあやふやなまま、ぼうっと飯を食べる。美味しかった。作った体の動き、フライパンの熱、焼ける匂い。車で買い物に行ったときから続く料理の工程が、今の味覚と繋がっているのか正直分からない。ただ、ゴボウの感触、芋の熱い匂いなどを覚えている。



午後から会場に行き、珈琲を淹れる係をした。室内は珍しく関東のような嫌な暑さだった。ホットーコーヒーよりも冷たい麦茶の方が嬉しいので、今日はあまり仕事がないかもしれない。適当に過ごしながら、熱量を持つウトロの漁師さんの話を聞いたりした。


会場にいるとき、どこまで自分の容量を保つべきか不安になる。けど、ただ目の前で起きている出来事に対して率直にぶつかるだけでいいのだと何となく感じた。


無鉄砲で疲れることだが、自分が完璧に潰れることは避けられるだろうから、後のことは本能や直感に任せる。また、他の人々も自分のペースを保ちながら会場にいるのだと分かり、自己嫌悪が少し薄れた。



夕方の30分ほど家に帰り、Nと一緒にご飯を食べる。Nは雑なご飯でも、美味しい!と言うので助かる。


夜はクリエーションをして、様々な動きを追体験した。異なる風景の下、聞いたことのある言葉を聞く。声の少しの抑揚でこんなにも印象が違うのかと思った。動き、声、複数の人間、音。全てが一つの流れに乗っていく。


皆が話し合いをしているときに、斜里在住の人の日記を読ませてもらった。秋から冬への準備の話で、関東出身の私とは寒さや冬の感覚が違った。


自分がここにいるとき、他の地点で生きている人のことは分からない。そうやって溢れたものを拾い集めるような感覚がして、日記はいいものだと思った。


夜は、暑い体をどうにか涼まそうと窓を開け放って、コンビニにアイスを買いに行った。NはMOWのバニラアイスを買い占めてやる、と言い、MOWを3個と私と同じソフトクリームを買っていた。


駐車場にウトロの夫婦が偶然いたので、Nは雨の中事務的な話をしている。私は、助手席のシートを倒しながらアイスを食べていた。ぼうっとフロントガラスに流れる雨粒を眺める。


車に戻ったNは街を適当に走りながら、片手でアイスを食べている。時速30キロほどの速度で見る街は、街の暗さと余白を強く感じた。






2022/8/11 お菓子



朝8時過ぎに起きることが常となってきた。こちらに来てすぐはNも私も6時か7時に起きてゆっくりと朝を過ごしていたが、今はもう慌ただしく昼に向かっている。


朝起きるとそのままの体勢で少し文章を書き、ウトロの奥さんの起きるタイミングを見て、部屋から出た。お湯を沸かして浅煎りの珈琲を淹れていると、博物館でピアノを練習していたNが帰ってきた。


その慌ただしい動きのまま、Nが生ゴミを出しに行くと道の真ん中で全てぶちまけたと叫んで帰ってきた。奥さんが落ち着いた様子で助っ人に行き、私は中々落ちないドリッパーを見ていた。


生ゴミがどうにかなると、3人で昨日焼いたお菓子と珈琲を飲んで、奥さんは人に会いに行った。Nは会場に行き、私は2つめのクラフティ作りとスコーンの生地作りを始めた。オーブンの予熱を始め、クラフティの材料をざっと混ぜ、網で濾しながら容器に入れ、ブルーベリーとプラムを並べて焼いた。


焼いている間に生地をまとめ、1時間ほど冷蔵庫で寝かせる。その間に会場へ行くと、大型紙芝居が上演されていたので見た。顔見知りのお婆さんたちが声を張って台詞を読んでいた。内容はオホーツク海のオオダコ様の話だった。


かつての図書館で行われた大型紙芝居が、こうして閉館後も行われている姿は、まるで幻のようだった。会場には見知った顔が溢れていたが、それらはそう見えているだけの知らない人々で、私は辛うじてそこに存在し、この場所の記憶を覗き見ていた。


Yさんが洗濯機を回したいというので、N家に連れて行き、洗濯機を回している間に昨日のケーキを出した。私は片付けなどをしながら、プラムと砂糖の入った鍋に火をつけ、スコーンの生地をまるめてオーブンに突っ込んだ。


その間に、トマトとしらすとバジルのパスタを作って、作り置きのきんぴらとポテトサラダを食べた。


料理がしたいというよりも、体を動かす工程が分かるので、そのままに体を動かしているだけだった。クラフティ、スコーン、ジャム、パスタも全て何度か経験したことのある行為。場所や状況が異なっても、それらは再び繰り返すことができる。


午後になり、シフトのために会場へ行った。作ったものたちを持っていくと喜ばれたので良かった。


1人で作って食べることも、皆に渡すことも好きだったが、後者の方が好きなのかもしれない。お人好しとかそういうものではない。ただ、他者や環境に働きかける行為だから好きなのかもしれない。


また、それらの行為がどういうことなのか分からないので、作り続けることができるのだと思う。






2022/8/12 一時帰宅


朝、物音がしたので姿の見えないNに連絡すると、温泉に行くところを引き返して一緒に連れて行ってくれた。1年ぶりの湯元館は、覚えていたよりも綺麗で悪くなかった。


家に帰るとNはすぐに会場に行き、私は温かい葱のうどんを食べて、スコーンの残りの生地を焼いた。化粧をして、帰る支度をする。布団を押し入れに仕舞い、自分の荷物をリュックとダイソーで買った籠に分けた。


籠と3つのハンガー分の衣服を部屋の端に寄せる。部屋を少し空ける際、自分の持ち物は全てきちんと片付けたい。何故かは分からないが、その方がずっと安心する。スコーンを会場に置き、スーパーでキムチを買って再びうどん食べた。



斜里バスターミナルから13時過ぎのバスに乗る。大型バスのシートがとても心地よく感じ、頭上から吹く冷房の風を新鮮に感じた。しばらくの間、まともに冷房を浴びていなかった。とても良い移動の時間になるような気がする。眠い。


斜里の街中で、少し関わりのある東京の大学生を見た。彼はピンクの自転車に乗って、信号を渡った。まるで地元の人のようだった。でも、地元の人から見たら観光客だとすぐに分かるのだろう。


半ズボンの足や半袖の手を日に当てられながら、ずっと眠っていた。寝転ぶかというほど傾いていたと思う。バスが止まるたびに起きて、変わらない風景をみていると、あっという間に女満別空港に着いていた。


ぼうっとした頭でお金を払い、コンビニでアイスコーヒーを買った。冷たい美味しさで体が目覚める。時間があったので展望台行ってみると、とても暑かった。


私は、何故か早く家に帰りたいと思っていた。それは実家か、東京か曖昧な場所だったが、北海道を去ることが少し楽しかった。またすぐに来るからだろうか。


さあっと消えるように去って、人混みに紛れるように現れたい。あまり責任のない不安定な身体が好きだ。今日から一週間この地を離れる。






2022/8/15 休み


昨日はバイトに行った。休館日だったので、普段行わないような作業をした。人工滝の所々に溜まった落ち葉やヘドロを取って、濾してから捨てた。ヘドロは臭いので、みなはその作業を嫌々行なったが、私は楽しかった。潮干狩りや泥遊びを思い出す。


シャベルや穴のついたスコップでヘドロをバケツに入れた。防水の作業着を着たが、ヘドロまみれになって臭かった。作業中はとてもお腹が減ったので、健康的だと思った。


帰ってシャワーを浴びたら寝ていた。連日の疲れがあるらしい。横になりながら昼の残ったおにぎりを食べて歯を磨いてからまた寝た。


朝起きたら5時半だったのでまた寝た。起きようと思ったら9時過ぎだったので色々やろうと思ったが、頭がとても痛かったのでまた寝た。


寝ても治らないので、コンビニに食べ物を買いに行った。常備食がないので、いちいち家を出るのは面倒だが、自分の状態がよく分かるので好きだ。軽い眩暈がして、頭が痛い。


コンビニで冷凍の焼きおにぎりと生野菜のパックとコンビニで作るスムージーを買った。食べて、冷えピタを貼って鎮痛剤を飲んで寝ると頭痛が治った。そのままダラダラして15時ころになる。


お腹が減ったのでコンビニに行った。ラーメンのサラダと餃子を買って、電子レンジで解凍した。添加物の味をしっかりと知っているわけではないのに、何となく分かる。美味しく作られているはずなのに、美味しく感じない。不思議だと思いながら食べ終え、作業をした。


夕方、服を買いに吉祥寺に行った。申し込んでいた地方の大学のプログラムに落ちていた。なので可愛い服を買った。夜はキムチ鍋。
















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